2016年4月1日金曜日

受験攻略 西南女学院中


◆概略◆
  • 私立(ミッション系)学校法人西南女学院
  • 女子校
  • 中高一貫校であり、併設の西南女学院大学、同短期大学部への進学も容易。(北陵に大学、短期大学、附属シオン山幼稚園、南陵に中学校、高等学校を持つ総合学園)
  • 全国の有名大学の指定校推薦枠を多数もっており、隠れ穴場的存在。
  • 英語教育に主眼を置いている。
  • 福岡市の西南学院は姉妹校であり、西南学院大への入学枠も多数ある。(経営資本は別。)両校の深い縁は設立時にまでさかのぼる。西南学院創設者のC.K.ドージャー氏をはじめ多くの関係者が西南女学院「西南の森」に永眠している。

◆人気度◆
 一時期、伝統校としての人気に胡坐をかいていたため、人気度が著しく低下したが、ここ十数年の学校改革の取り組みによって、お嬢様学校の落ち着きを徐々に取り戻しつつある。(生活態度に問題があった場合は停学・退学処分などの厳しい措置も行われているようだ)。
 首都圏での中学受験の過熱ぶりやその難易度を鑑みると、はっきり言って超穴場。無理をして難関中・高に入学して必死についていくよりも、同校で上位をキープしたほうがかえって学力が付く上に、指定校推薦を利用して難関大学合格を勝ち取ることもできる。首都圏の難関私大が急激に狭き門になる中、同校の人気度はさらに上昇することが予想される。
 ただし、成績下位グループの生徒の中には、まだまだ学習意欲の低い層も紛れ込んでいる。楽なほうに流されやすい人は、同校のメリットを全く享受できない。

 同校の特色の一つに、良質の英語教育があげられる。今の小学生たちはセンター試験廃止後の技能型入試(GTECやTEAPなど)に対応できる力が求められるので(もちろん、対応しなくても大学受験はできるが、対応できた方が圧倒的に有利)、旧態依然とした公立上位高や入学時偏差値だけ高い中高一貫校には真似のできない魅力がある。(実際に、成績下位層でも4技能型新試験になった英検にバンバン合格しているほか、英語学習未経験者を2年後には高円宮杯全日本中学校英語弁論大会の全国大会に進出させてしまうだけの指導力がある。)
 一方、理数系の授業はやや物足りない印象。国公立大理系学部であれば十分対応できるが、医学部医学科を目指す生徒は通塾がマスト。

 学校説明会などでは、数年前まではラフな服装の親子も少なくなかったが、ここ数年はきちんとした身なりの参加者が増えてきている。また、入試問題の難易度が変化していない中で、受験者平均点が目に見えて上昇している。このようなことからも、受験層の変化がはっきりと見て取れる。受験者数もここ数年増加し続けている。アンテナ感度の高い層は他校の合格を蹴って同校を選び始めているようだ。
(余談であるが、オープンスクール参加者は当然合格を目指しているのだろうが、ごく一部見かける、スカート短め親子や若干派手目のお召し物家族は、有形無形の形で受験がすでに始まっているとは考えないのだろうか?)

 同校受験を視野に入れている来年度以降の受験生は、オープンスクールや学校説明会に積極的に参加してほしい。(もちろん、服装や立ち居振る舞いに十分留意を)


 なお、学校改革の詳細は、「これからの時代を生き抜く学力を育てる」(学事出版)を参考にしてほしい。

 

入試情報◆
  • 次の2方式からどちらか1つを選んで出願する。
  1. 国語(100点)、算数(100点)、社会(50点)、理科(50点)、合計300点満点の4教科学力テスト→70名程度の募集
  2. 国語(100点)、算数(100点)、英語(50点)、合計250点満点の3教科学力テスト→10名程度の募集
  • 入試成績による特待制度(S・A・B)がある。ちなみに、最上位のS特待を勝ち取るには、8~9割の得点が必要(筆者予想)
  • 首都圏では中学入試での英語受験が当たり前になったが、北九州地区では同校がいち早く英語受験を取り入れた。
※平成27年度より、前期(1月)・後期(2月)制に変更になりました。特待生は、前期合格者からのみ選出。また、後期日程では3教科型は実施されない。

攻略ポイント◆
 競争率は決して高くないが、地元唯一のお嬢様学校として根強い人気がある。残念ながら、10年以上前のイメージのままで簡単に合格できると誤解している保護者も多い。しかし同校では、一定の得点に到達していない受験生に対しては容赦なく足切りをおこなっており、甘く見ると痛い目に合う。合格ラインも年々上昇しており、3~4割の得点率で合格できる時代は完全に過去のものとなった。過去問で正答率が5割を切るようだと赤信号。(2019速報:合格最低点 4教科型141点/300、3教科型139点/250)

 「人気度」の項で述べたように、近年、受験者数は増加傾向にある。中学入試においてはまだまだ合格しやすい偏差値だが、高校入試で合格するのはすでに難しくなりつつある。(高校入試での特進クラスボーダーはおそらく得点率7割以上)
 
 10月に同校主催で入試対策講座(無料)が行われているので、必ず参加して傾向をつかむべし。



【国語】
 私立中堅レベルの学習が必要。過去問学習必須。福教大附属中、九州国際大学付属中の過去問も合わせて行うとよい。

 西南女学院の国語の特徴として、文章のボリュームが大きいことが挙げられる。文章自体は読みやすいのだが、長いため、準備不足の生徒は時間が足りなくなる。また、単純に抜き出す問題のほかに、自分で考えて答える読解問題もいくつか出題されるので、よく練習しておく必要がある。

 入試まで時間がある場合は、四谷大塚の「予習シリーズ」の4年上~5年下で基礎力を付けてから本格的な学習に入ってはどうだろうか。
 また、入学後の授業まで考えて学習するのであれば、「ふくしま式」問題集をやっておいて損はない。(やり方はこちらを参照のこと)


【算数】
 私立中堅レベルの学習が必要。結構難しい。平均点は6割程度と予想される。 受験者層の変化とともに平均点も上昇し7割を超える。後半の大問はなかなか得点しづらいので、前半の基本問題で確実に点を積み重ねる必要がある。単位換算や、小数の計算などでのうっかりミスが合格を遠ざける。
 なお、多くの問題で「答え」だけでなく「計算式や解き方、考え方」も採点対象となるので注意。

 塾に通わずに、自宅学習で突破を図る場合は、下剋上算数シリーズもおすすめ。基礎編のみでも対応できる。

 余裕があれば、福岡雙葉中などの福岡市内の女子校過去問も取り組む価値がある。(たとえば、2015年雙葉大問5と2009年西南女大問5はソックリ)

※2016年度は予想通り虫食い計算(計算途中の穴埋め)が復活するなど、2015年度と比べてやや難化した。2017年度は2016年度とほぼ同等。2018年度以降しばらく同程度の出題が続くと予想される。


【社会】
 私立中堅レベルの学習が必要。漢字で書くべき語句をひらがなで解答した場合は減点対象。

 問われている内容はオーソドックスだが、記述問題が多いので、暗記だけでは厳しい。地理分野の出題割合が非常に多い。雨温図は頻出。歴史分野も幅広く出題される。歴史時代区分は必出。公民分野はほとんど問われないが、受験年度の時事問題(10月頃までの出来事)は必出。

 旺文社の「でる順」シリーズなどで、夏休み前半までには暗記事項を片付けて、夏休み後半から秋以降は記述問題や実践問題の演習に入りたいところ。
 また、ミッション校であることを考慮して、キリスト教関係の出来事は念入りに学習しておきたい。(2019年では世界遺産に登録された潜伏キリシタン関連遺産について出題)

 なお、時事問題の出題テーマは、サミットやオリンピックなどのある程度予想できる範囲であるが、設問内容はかなり難しいので、秋ごろに出版される時事問題のまとめ本は必ず一通り目を通しておいたほうが良い。(例えば、2017年度入試では、1940年に予定されていた東京オリンピックが実際には開催されなかった理由を記述させる問題が出題されている。)


【理科】
 私立中堅レベルの学習が必要。漢字で書くべき語句をひらがなで解答した場合は減点対象。大問4題(物理・化学・生物・地学、各1題)。

 社会同様記述問題が多い。減点されにくい答案の書き方を練習しておきたい。(説明させる問題での「主語抜け」や「てにをは」の間違いは避けるべし)。高得点を狙いたい場合は、10月頃に行われる同校主催の対策授業を必ず受講すること。

 四谷大塚の「四科のまとめ」や日能研の「メモリーチェック」で不得意分野をカバーしておきたい。



【英語】
 英検4級レベルの学習が必要。旺文社の英検用テキストでしっかり準備しておきたい。入試まで時間の余裕がある場合は、英検5級からじっくり取り組むのもアリ。リスニングもかなり出題されるのでCD付の英検用教材で練習しておくこと。メモを取りながらの練習も大切。

 なお、全問選択式の解答なので、記述問題の練習は不要。(つまり、単語の書き取り練習などは必要ない)
 英語受験者には日本語での面接も行われる。オーソドックスな内容なので大がかりな対策はしなくてもよいが、基本的な受け答えは練習しておいた方が無難だろう。

 ちなみに・・・英語受験合格者の平均点はかなり高い(8~9割程度)と思われる。4教科型入試の合格者平均は7割程度と予想されるので、4教科型入試と英語型入試で迷っている場合は、4教科型の方をお勧めする。


4教科共通の推薦テキスト】⇒テキスト特別キャンペーン中!

・中学入試 新小学問題集(塾専用教材)
西南女学院中で特待生合格を目指す受験生に最適。各教科ステージ1~ステージ3までの3冊ある。ステージ1は4年生ぐらいから使用可能なので、早めにスタートして他の受験生に差をつけて欲しい。残念ながら一般の書店では入手できない。
⇒KKC受講生、WEB会員の方はこちらから購入してください。

・新小学問題集「受験の攻略」(塾専用教材)
最小限の労力で合格を勝ち取るならばコレ。各教科1冊にまとめられているので、残り数か月からの逆転も不可能ではない。あきらめるのはまだ早い。1位だろうとギリギリだろうと、合格は合格である。あとは入学してからいくらでも巻き返せばよい。
⇒KKC受講生、WEB会員の方はこちらから購入してください。 

・四科のまとめ(四谷大塚)
中学受験のバイブル的教材。基本が非常にバランスよくまとめられている。夏ごろまでをめどに一通り身につけておくのが理想。
 なお、四谷大塚には「予習シリーズ」という超有名テキストがある。久留米附設などの難関校を目指すのであれば、四谷大塚の予習シリーズはすらすらとけるようでなければならない。一方、北九州地区の中学校程度であれば予習シリーズはオーバーワーク。
⇒四谷大塚の教材販売サイト
※購入には会員登録が必要なようです。また、在庫がなくなった時点でその商品は発売停止になり、翌年度分が発売されるまで待たないといけなくなります。人気教材は早めに購入しておくことをお勧めします。

・メモリーチェック・ベストチェックシリーズ(日能研)
基本レベルのまとめに最適。四科のまとめと並んで、非常に人気が高い。特に社会は秀逸。
⇒メモリーチェック購入



【願書】
 学校に直接請求できるが、学校説明会や、進学塾主催の入試説明会などでも入手可能。頻繁に学校説明会やオープンスクールを行っている。






模擬試験◆
北九州地区では、首都圏で行われるようないわゆる「三大模試」に当たるものが存在しない。したがって、私立中主催の模試や外部模試を上手に利用してほしい。なお、大手進学塾の模試はテスト後のしつこい勧誘がないところを上手に選んでください。

国・私立中学入試模擬試験
中規模の全国模試だが、ほどほどの難易度のため北九州地区の合否判定にちょうど良い。第4志望まで判定できる。(4~7月は成績票に合否判定が付かないが、8月以降の成績票で累積判定として反映されるのでなるべく年間を通して受験したほうがよい。)成績票のコメントがやや辛口だが、成績が上昇すると気持ちがいいほど褒めてくれる。

雙葉チャレンジテスト会
福岡雙葉中主催の模試。福岡地区の学校なので遠いのが難点だが、問題難易度が同程度であるため、西南女学院中を第一志望とするのであれば、参加する価値はある。無料。

敬愛模試
毎年10月頃に実施される敬愛中学主催の模試(国算2教科)。無料で参加できる。易しめであり、この模試での出来が芳しくないようだと、西南女学院中の合格は黄色信号。

小倉日新館中学招待模試
毎年10月頃に実施される小倉日新館中主催の模試。無料で参加できる(成績表の郵送を希望する場合は切手代実費)。

◆入試対策授業◆
西南女学院中学入試対策講座
西南女学院中では、秋に対策授業を行っている。同校に合格したいのであれば、塾を休んででも絶対に参加しておいたほうが良い。無料。
なお、当日配布されたプリント類は、受験本番までにしっかり学習しておくこと。


◆入試当日の保護者の流れ◆
 自家用車で送迎する保護者が多い。臨時駐車場および保護者控室(談話室のほか図書室も開放している)が用意されており、ほとんどの保護者が入試終了まで待っている。
 控室にも入試問題が掲示される。


入学後の様子◆

学習編
  • 英語教育(いわゆる受験英語ではなく、卒業後に使える英語)に力を入れており、外国人講師による授業やAPU(立命館アジア太平洋大学)での研修、希望者向けの海外語学研修など、語学プログラムが充実している。センター試験廃止後の4技能(読、書、聴、話)型入試を見据えた場合、現時点では北九州地区で最も良い環境にあるといえる。(もっとも、同校の英語成績上位者はほとんどが小学生の早い時期から英語を学習しており、その成果が出ているだけだという見方もできなくはない)。
  • 高校進学時のクラス編成で特進コースと進学コースに分かれる。国公立大や難関私立大を目指す場合は特進クラスを目指したいところである。なお、4年生(高1)で進学コースになっても、頑張れば5年(高2)進学時に特進コースへの変更は一応可能。
  • 私大の指定校枠は非常に充実しているが、当然、評定平均値など厳しい条件をクリアする必要があるので、同校に合格したからといって浮かれていると、後悔することになる。中間テスト、期末テスト、課題提出などにしっかり取り組んで、評定値(通知表の点数)を勝ち取ってほしい。同校に進学することの恩恵は、ひたすら上位に食い込むことによって、大いに得られるのである。
  • やや意外だが、リケジョも割と多い。基本、標準レベルの内容をしつこく学習できる環境が、私立大医療系学部や理工系学部への進学とマッチしているのだろう。
  • 英単語テストや識字(漢字)テストなどの小テストがかなり頻繁に実施されている。不合格になると補習が待ち受けており、このことに関する保護者からの評判は割と良い。つまり、生徒からの評判は悪い。夏休みや冬休みにも容赦なく補習があるので、結局最初からまじめに取り組んだほうが良い。

生活編
  • 文化祭と体育祭は隔年で交互に行う。借り物競争やパン食い競争など女子校らしくお祭り感満載で楽しい。
  • 出席番号がアルファベット順なので、新鮮。ただし、AやWで始まる人は変化を実感できない。
  • 誰かが讃美歌を口ずさむと、ついハモってしまう。しばしばクラス中の大合唱になる。
  • 毎日、スコラライトという手帳で学習管理をする。が、数か月溜めてしまい提出期限前に地獄を味わう人も。成績上位者の手帳は、やはり素晴らしい。
  • 学食メニューがとにかく美味しい。(大盛ランチがすぐに売り切れる)
  • 南陵のロウ記念講堂や北陵のマロリーホールなどの歴史ある建物がいまでも大切に使われている。卒業生にとって美しい思い出の場所である。

大学受験実績編
  • 難関有名私大の合格率はさすがである。しかも指定校推薦枠が余っているというナントも贅沢な状況。少子化にもかかわらず同校の受験者数・入学者数は年々増加傾向にあるが、まだまだ当分は余裕をもって支えられそうである。
  • 国公立大合格者数はあまり多くないが、これは単に国公立大進学希望者が少ないためである。もちろん国公立大志望者へのサポートは少人数な分手厚く、その合格先は医学部医学科、旧帝大、東京外大、東京藝大など多岐にわたる。
  • 難関大学以外では、外国語・国際系、医療系、芸術・音楽系の進学は非常に強い。
  • 筆者はこれまで、「同校のカリキュラムは理系に弱く、国立大医学部医学科には向いていない」と述べてきたが、きっちりと合格者を出してきたため撤回する。

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